詩人と謡い手

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詩人「君は僕に 『あなたは私がいないと 感情がない点と線の複合体しか作れないじゃない』 と言うけれど、それは君も同じだろう」 謡い手「あらそうかしら」 詩人「だってそうだろう。 君の言葉は嘘しかない。 デタラメと屁理屈ばかりで美しさがない。 僕の言葉がないと、君は人に理解を得ることもできないだろう」 謡い手「そうかもしれない。 でも、あなたの言葉は本当に美しいの? 冷血男の言葉なのに。 私の込める感情は、本当に情緒豊かなの?」 詩人「そうだよ。 だって、君の気持ちは僕のものだから。 それに、僕の言葉は君のものだろう?」 謡い手「そうだね。 あなたの言葉に私の感情。 私の感情にあなたの言葉」 詩人「そう、 ギブアンドテイクの関係だ。 素敵だろう? 例えば僕が、君への愛を綴ったとしよう。 君がそれを読み上げるんだ。 僕に向かって。 君が好きだよ、と」 謡い手「私はあなたを好きではないわ。 それでも感情を込めて読むの」 詩人「僕もそんなことみじんも思ってないけどね 美しい言葉を紡ぐためなら、嘘のセリフも書くだろう」 謡い手「あなたには私がいないと本当にダメね」 詩人「そうだね。 君がいないと、僕はただの嘘つきだ。 だから、 愛しい僕の相方、一緒にウタを紡ごう」
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