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「安いよ!安いよ!完全閉店ファイナルセール!欲しかったあの服も、ブランドもののこの服も、全品半額以下!最大90%OFF!さあ残らず持ってけ!
さあさあ安いよ、安いよ!完全閉店ファイナルセール!」
ねえ 聞いて 私あなたを初めて見たときから…
「さあさあ安いよ!」
あなたのことが…
「全品半額以下!」
だから特に欲しいのがなくても…
「最大90%OFF!」
あなたに会いに店に来て…
「完全閉店ファイナルセール!」
奥さんの気持ちは嬉しい でもあなたには家庭が…
え?言ってなかったっけ?
あたし自分でいうのもなんだけど売れ残りなのよ!
ねえ閉店ファイナルセールするから買ってくれない?
「奥さん…いいえ、お嬢さん。あなたはどんなに大金を積んでも買えそうにない。
今度独立して、小さなアパレルショップを開くんです。だけどひとりじゃ心細くて…
僕に、その白くつややかな手足を、快活な唇を、満面の笑顔を、吸い込まれるようなまなざしを、そしてあなた自身のあたたかな愛を、レンタルさせてください!」
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
mannequin どもの拍手が聴こえる
関節を外しながら器用に叩く鈍くも甲高い音が会場を盛り上げた
mannequin どもの standing ovation
「あれ?マイクが入ったままだった…」
「そんなのどうだっていいじゃない?ありがとう!あなたに一生分の無償の愛を捧げるわ!」
standing ovation はまだまだ続く
mannequin どもの飽きた頃
ホタルの光が宙を舞い
会場に幕がおり
final sale は終わりを告げた
mannequin たちは
いつの間にやら関節を元に戻し
水族館のガラスの中へと
行儀よく入り
いつもの物言わぬ
動かぬただの人形へと戻っていた
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