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蔵の硬い床に顔を打ちつけながら、俺は少女を見た。俺を抱えて走ったのに、息切れ一つしていない。
「な、なぁ、教えてくれないか? いったい何が起こってるんだ!? あの首無し達は、なんなんだ?」
「呪い」
壁に背を預けて、日本刀をカツンと床に突きつけながら言う。呪い?
「この地に蔓延る呪縛みたいなものって言えばわかる?」
「…………いや」
「わからないなら、わからないでいいよ。私は斬るだけだから」
スーッと引き抜きぬかれた、日本刀を半身ほど引き抜く、斬る。やっぱり斬るのか。さっきは鞘で殴り飛ばしていたけれど、やっぱり斬るのか、その呪いってやつ。
「てっきり私は、呪いの根元はあの腹黒い主人にありそうだと思ってたけれど、違ったみたい」
少女は、フムと考えているようだった。ブツブツと呟いている。
「呪いって奴を斬るにはどうすればいいんだ?」
「呪いの根元、逸話を解き明かす、もしくは呪いを生み出した人に『語ってもらう』。懺悔みたいなもの」
だから、あの時、旦那様に語るように促したのか。でも、それは的外れだった。
「けれど、まったく無関係じゃなかった。あの主人が話した過去は、呪いに繋がっているかもしれない、首無し達は呪いに飲み込まれた犠牲者」
「犠牲者、じゃあ、ここに来た客や使用人達は全員、首を落として死んでいるってことなのか?」
「そういうことになるね。それともう一つ、不可解なのがある。どうして、君は呪いに飲み込まれていない?」
質問に、質問で返されても、俺にもわからない。
「もしかしたら、俺も呪いってやつに飲み込まれてるんじゃないか?」
と答えた俺は、なんてバカげたことを言ったんだと後悔した、それは俺もいつか、首無し達みたいに、首を落として死ぬかもしれないのに、なんで、
「うん、否定はできないけど、君には切れ目がないしな」
ジロジロと少女が、俺の首筋を眺め回していた。
「きっ、切れ目?」
「そう、使用人や客、腹黒い主人には全員、首に切れ目が入っていた。ちょっと押せば簡単に転げ落ちてしまうような、薄く、しかし、鋭い切れ目があったけど、貴方にはそれがない」
至近距離で少女は言う。
「貴方と、首無しとは、決定的に違う部分がある。おそらく、それ解き明かせば呪いにたどり着ける」
そして、斬る。俺と旦那様や、使用人達、客の違いを思い浮かべてみるが、大差はない。
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