第1章

11/16
前へ
/17ページ
次へ
「あるのは、旦那様との血縁関係だけだ けだ。これ信じられるか?」 その事実も本当か嘘か、わからない。口から出任せの嘘かもしれないからだ。少女を襲うための、口実。 「無関係じゃない。孤児の君を、雇うには、孤児の君を育てて、雇う理由には納得できるし、君の母親のこともある」 少しずつ、パズルのピースがはまっていく。子供は、男と女の性行為で産まれてくる。つまり、父親がいれば、当然、母親がいなければおかしい。 「じゃあ、奥様か?」 「使用人の女だと言っていたから、たぶん、この屋敷にはいないと思う。あの男の言動から予測するなら、もう不慮の事故か、何かで亡くなっていてもおかしくない」 「決めつけるなよ」 「じゃあ、どうして、君は一度もは母親も会ったことがない? それとも使用人の中に君の母親だと思う人はいるかな?」 少女に言われ、思い浮かべてみるが、それらしい人はいない。古参のおかみさんなら何か知っているかもしれないけれど、どうせ、首無し達の仲間入りしてるだろう。期待はできない。 そもそも、俺はいつから呪いに巻き込まれていた? なんの前触れもなかったわけじゃない。おそらく何かしらのキッカケがあったはずだ。偶然、ルール、入り口、俺だけが生き残っている。バラバラだったパズルのピースを積み重ねていく。真っ白な用紙を眺めているように、答えは出てこない。少女は、無言だった。 いや、何か見落としている。キッカケが、 「聞いておくけど、君が確認できる限りで、生き残りはいないの?」 「え?」 「考えてみて、君だけが生き残りじゃないかもしれないって、あの大広間に居た連中は全員、犠牲者だったけれど、そう、他の部屋に誰か居たりしなかった?」 居る。他の部屋に居て、呪いに巻き込まれていない奴。 「空」 あの少女の名を呼んだ。襖、一枚だけ隔てて会っていた少女の名前。もしかしたら、いや、きっと彼女ならそうしてくれると思った瞬間、視界が歪んで、見慣れた襖の前に立っていた。 「よく来たわね。佐次」 危機感のない声に、俺は呆けてしまう。 「空、大変なんだ。屋敷の人達が首無しの化け物になって」 「知ってるわよ。大勢の人達が死んだのよね」 空は普段と変わらない口調だった。 「佐次、ちょっと話をしましょうか。この屋敷が立つ前はどんな場所立ったと思う?」 「空、こんなことしてる場合じゃない」 「処刑場だったのよ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加