第1章

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歯を鳴らしている音だった。一個一個、木箱に入れられ、どの顔も苦悶の表情を浮かべている。中には顔なじみの奴もいた。 空は言っていた。ここは処刑場だった。何人もの罪人達の斬首して、その頭部は見せしめとしてさらされたに違いない。骸骨なるまで、ずっとさらされていた。 その憎しみや悲しみが、この地に呪いとなって芽吹き、屋敷の人達を全て殺して手足のように使っていた。新しい犠牲者を呼び込むための手足として!! 「なんで、なんでなんだよ!! 空!! 人を殺して、首を奪ってそれにいったいなんの意味があるんだよ!!」 慰めてもらったことがあった。褒めてもらったことがあった。悩みを聞いてもらったことも少なくない。 「決まってるでしょ。外に出るためよ」 空は言う。いつもと変わらない、ゆっくりとした口調で、 「けれど、どいつもこいつも首をもぎ取っても助けてくれとしか言わないのよ。私と一緒に、私の顔になれば、外に出られるのに嫌だって言うの。ムカつくわよね。でもね、佐次、私だって好みがあるの。この身体にふさわしい骸骨が必要じゃないかしら」 語りかけてくる。 「年頃の少女の身体に、おっさんやおばさんの顔じゃ変でしょ。だから、佐次、貴方がいいわ」 それは果実を育てることと、同じだったのかもしれない。孤児の俺を育てて、ちょうどいいサイズの顔になるまで育てるため、そして、その時がきた。 たぶん、俺だけじゃない、旦那様や奥様、他の使用人や客達も襖を開いたことで、空に取り込まれ、首をもぎ取られた。 彼らと俺の違い、それは襖を開けなかったかどうか。めんどうなことするのか、襖を開けさせるなんて、めんどうなことをさせるのか。それは空が、この屋敷に根付いた呪いだから、招き入れることはできても、外にでることはできない。 理由はわからないが、空は他人の顔、頭部を、骸骨を奪い取ることに意味があるらしい。 「どうしたの? そんな顔で睨んだってどうすることもできないのよ」 俺を囲むように、首無し達が集まってくる。じきに取り押さえられ、空に首をもぎ取られて死ぬかもしれない。俺には呪いに対抗する力はないんだから、 「そういうことらしいぜ。これで斬れるんじゃないか、呪いってやつを」 日本刀を構える、少女に向けて言った。少女は言っていた、呪いを斬るには、呪いを解き明かすか、語らせることで斬れる。  詳しい理屈はわからないが、生き残るためには、
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