第1章

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黒い着物に大きな瞳をした少女は、宴会の料理に手をつけるでもなく、広間の隅に座り、ジッと旦那様や客たちを見ていた。誰かの連れだろうか、それにしては誰も気にしていない。宴会は中年のおっさんが多い、下世話なことだが、若い女がいれば放置しているわけがないと俺は思ったのだ。 仕事も一段落ついて、俺は好奇心に負けて、女の子に話しかけてみた。 「なぁ、お前は宴会に参加しないのか? 酒は呑めないだろうけど、美味い飯はたくさんあるぞ」 「私は、宴会に参加するために来たんじゃないから」 女の子はポツリと答えた。宴会じゃないんだったらなんだと思い聞こうとしたが、おかみさんに呼ばれてそちらに向かう。 「ねぇ、貴方は、骸骨を知らない?」 女の子はポツリと俺に尋ねてきたが、おかみさんを無視するわけにはいかないため適当に知らないと答えた。 骸骨、そのことが頭の片隅に引っかかったが俺はそれを頭の片隅に押しやっておかみさんに指示を仰いだ。夜もふけたころ、旦那様の一人が、布に包まれた荷物を取り出した。 どんちゃん騒ぎの宴会は終わり、旦那様を含めた客、数人が一個の木箱を囲みながらそれぞれ期待に目を輝かせていている。 大広間の隅っこに座っていた女の子も、それをジッと見つめていた。客の一人が木箱の箱を開けて、中からある物を取り出した。歓声が広がっていく。 ─────────────骸骨。 そこにあったのは、白骨化した人間の頭蓋骨があった。かなり精巧に造られているのか、歯や目がくっきりしていて、つるりとした頭部は本物の骨のように白い。いや、あれは、偽物だよな。まさか、本物の人間の頭蓋骨じゃないよなと俺の不安をよそに、客の一人が自慢げに言った。 「さすがにこれを手に入れるのは、苦労しましたよ。なんせ、これは人の言葉を話す骸骨なのですからなぁ」 「と言っても、偽物ではないのか? 触れ込みでは斬首された少女の骸骨と聞くが、これほど精巧に残っているあたり、疑わしいが」 旦那様はしげしげと骸骨を眺めて、口元を抑えた。 「本当に話すのだろうな?」 客に旦那様が詰め寄る、旦那様の趣味は、オカルトや曰く付きの物品、呪われた品や悲惨な過去を持つ遺品などを蒐集がしている。それには金に物を言わせて、強引に買い取ったりしているらしいが、あの骸骨も商品の一つなのかもしれい。 今回の宴会も、そのために開かれたのなら納得できた。
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