第1章

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それにしてもとても不気味な骸骨だった。遠目からしか見てないが、本物っぽくて気味が悪い。何よりも空や、謎の女の子から骸骨の話をされたから余計に気になっているのかもしれない。嫌な予感がした。胃の上のあたりがキリキリと痛む。大広間の隅っこでは、女の子はジッと骸骨を見ている。いや、見極めているような視線だ。まさか、盗むつもりじゃないだろうなと俺は変な危機感に陥りそうになった。 その時、旦那様の声が大広間に響く。 「どうした!? なぜ、話さない? なぜ、笑わない? これは笑う骸骨じゃないのか?」 酒に酔っているのだろう、旦那様は骸骨を取り出した、客に詰め寄る。客は困ったように辺りを見渡すが、誰もが骸骨に注目していた。誰も助けようとも、仲裁もしない。ニヤニヤと骸骨を眺めて、笑っている。 ゴスッ!! と、鈍い音と共に客が頭を抱えながらその場を転がった。旦那様が空になったビール瓶を握りしめ、額から血を流す客を見下ろしていた。一瞬、何が起こったか理解が追いつかずに、客の泣き叫んだ音で気づく。 殴った、旦那様が客をビール瓶で殴りつけた。旦那様は酒に強くはないが、他人に危害を加えるような人じゃない。 「だ、旦那様っ!!」 おかみさんが、驚いたように叫ぶと同時に骸骨が顎を打ち合わせることで笑った。 「ハハッ、ハハッ、ハハッ、ハハッ、殴ったぁ。殴ったぁー、あんたは、また、殴るんだねぇ」 骸骨がケタケタと笑い出す、もしも身体があればきっと腹を抱えて笑っていただろう。そう思えるほど、骸骨はケタケタと笑っていた。 「権力も地位も財産も、あんたは欲しい物をたくさん手に入れてきたけれど、あんたは『やってはいけないこと』をしてしまったことがある」 ケタケタと笑い続ける、骸骨が声、高らかに笑う。それを聞いた旦那様がサッーと顔色を悪くなっていく、呼吸は荒く、肌は色白だった。 「『やってはいけないこと』『やってはいけないこと』それは、あんたが若いころ……」 旦那様が骸骨の言葉を遮るようにして、怒鳴った。その態度が、あきらかに後ろめたいこをしたと物語っていたけれど 焦った旦那様は気がつかない。 額を殴られた客が、むくりと身体を起こすと旦那様に向かって言った。 「聞きたいものですなぁ、旦那様はいったい何をしてしまったのか?」 が、しかし、骸骨は、 「児馬雄太(コマ、ユウタ)は借金取りに追いかけられている。」
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