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下校時間、孤立しながらも部活に参加した彼は、3人と一緒に歩道を歩いていた。
「今日、部活は大丈夫だったか?」
「あぁ。3回連続で後頭部にボールがぶつかるくらいだった。」
「それは少ないな。この後の時間、結構短いけど何かあるのかね?」
「俺にも分からない。グレイは相変わらず、何かブツブツ言ってるだけだし。」
そう言って、彼がふと視線をグレイに向けると、いつもの笑みが特別深いものに変わっていた。背筋が凍る。
「実!危ない!」
「え?」
踏み出した左足が、地面を踏まなかった。そのまま、身体が宙に投げ出される。
「な、んで……」
いつもの道に崖なんて無いのに、彼は崖から落ちているのか。ーー理由は簡単だ。
「グレイ……お前……!」
『我ほど力のある存在なら、ちょっとした崖を作ることなんて容易い事だ。この辺りは高台にあるから、場所には困らなかった。』
ガンッ!
彼は、グレイの深い笑みと親友達の絶望を表した顔を見ながら、意識を失った。
「実!実!」
「救急車来たぞ!」
「こっちです!」
3人は、彼が落ちてからすぐに救急車を呼んだ。救急隊員を急いで案内し、崖下を指差す。
「この下に、友達が落ちたんです…!」
「ここ、いつもは普通の道なのに、なんでか崖になってて…!」
「助けてください…!」
縄を使って隊員が下に降り、しばらくして戻ってきた。
「あなた達の言う男の子は発見出来ませんでした。代わりに、これが落ちていました。その子の物ですか?」
真下に落ちたのに姿が無いのはおかしい。……が、3人は隊員の持っている物を見て息を飲んだ。
それは、4人でお揃いで買ったストラップの付いている彼のスマートフォンだったからだ。親友のよしみで知っているパスワードを入力すると開き、待受は4人で遊びに行った時に撮った写真だった。
「実は絶対にいます!もう少し、探してくれませんか?」
「「お願いします!」」
「………分かりました。」
その後、彼の消息は掴めず、現代の神隠しとして、大きな話題となった。
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