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今日も、彼の耳元ではグレイがひたすら人間の憎むべき点について囁いている。
『………だからな?っと……高瀬実、左から魔物が来るぞ。草食だ。』
「!」
グレイは、実の近くに魔物が居ると教えた。実は、それを聞くとすぐに移動を始める。
「…………。」
この森に来ていくらかの時間が経った頃、彼はここでの暮らしに順応した。
履き慣れた運動靴は壊れて裸足で生活し、着ていた学生服もボロボロ、髪もバサバサに伸びている。最近の男子高生らしい、危機感のない少しおっとりとした性格を表した見た目も一変し、鋭い目付き、傷だらけの全身、鍛え上げられた身体は重すぎず、引き締まっていた。
狩りの技術も身に付け、足音を立てずに森の中を駆ける。
「………シッ!」
「ギャン!」
彼と同じくらいの巨大なネズミの様な生き物の後ろに回り、魔物の骨を石などで削って作ったナイフで心臓に一突き。皮を剥ぎ、血抜きをする。すぐに移動を始め、川で血を洗い流した。
「………いただきます…」
川の中で手を合わせ、ぽそりと小さく呟くと、肉を生で噛みちぎり始めた。日本人に似つかわしくない、少し発達した犬歯を使い、肉の筋を引き剥がす様にして食べていく。
『美味いか?』
「………普通。……チッ…来た。」
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