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グレイの相手をしながら半分ほどネズミを食べ終えると、残りを水の中に落とし、すぐに近くの木に登った。今では、木の皮を剥がすことなく、とても静かに登り切る事ができる。
「グルルルルル……」
「あいつ……俺の獲物をいつも横取りする……嫌いだ…」
水の中に落ちた肉を器用に喰うのは、初日に実を追いかけた虎だ。あれから、虎とは1度闘っている。
『だが、人間よりも嫌いな生き物はいないだろ?』
グレイが"人間"という単語を零すと、実の肩が震えた。
「……うん…あんなに残酷な生き物…いない…自分が嫌いになる…でも、死にたくない…」
『お前は今、人間とは違う生活をしているんだから、気に病むことはないぞ。』
「うん……あいつ、また一回こらしめないとな……」
彼は、延々と続く言葉を聞いているうちに、無意識で思考の方向を変えられてしまっていた。すっかり人間不信に陥ってしまっている様だ。すぐに話を切って、目線を下にいる虎に戻す。
『そうだな。……そうしたら、下僕にできるんじゃないか?』
「……そういうの、好きじゃない。」
『そうか。お前の好きな様にすると良い。』
グレイは、本当に彼につぶやいているだけの様だ。ジッと、彼を見つめる。
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