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「…………。グレイ、何か来る。」
『あぁ……この気配は…』
「知らない気配だ。………しかも、複数いる。この辺りで群れる生き物はもっと気配が薄い。」
食べ歩きをしていると、不穏な気配がする。彼は、さらに気配を探る。
「………大きさも小さい気がする。ネズミと同じくらいの高さの……もう少し軽い。俺より大きいのが3、小さいのが2……なんだ?この辺りで子持ちの群れは、最近南に向かったはずだけど……」
秋も終わり頃…そろそろ食料が減り始め、寒くなってくる頃だ。寒さに弱い生き物は、住処を移動する。彼の可能性からは除外された。
「グレイ、分かるか?」
『分かるぞ。………人間だ。』
「………っ!」
実は、全速力で逃げ出した。反射的な動作で、信じられないほどの初速が出る。脇目も振らずに走っているため、周りへの注意を怠ってしまった。
『おい、待て…其方は…!』
バチンッ!
「っああぁぁ!?…っんだコレ…!罠…!?」
実の無防備な脚に、大きな歯の付いた金属が食い込んだ。所謂トラバサミという物で、こちらの虎のサイズに合わせてある為、実の膝を越え、腿の辺りに外周の歯が食い込んでいる。
「…っくそ………外れろ…!外れろ…!」
歯と歯の間に指を差し込み、無理矢理外側に開けようとするものの、痛みで上手く力が出ない。ガクガクと震える指で、必死にもがく。
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