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実は、簡素な部屋の小さなベッドに寝かされていた。連れてこられたのをそのまま寝かされていて、シーツはドロドロに汚れている。
「ん………………ぁっ!人間は!?……っう…」
起きてすぐに覚醒した彼は、飛び起きた瞬間に酷い眩暈に襲われた。
「ぐ…………人間…め……逃げなきゃ………」
どこか建物の中に居ると気付いたので、貧血なのもお構いなしに立ち上がり、ふらつく身体でひとつの窓に近付く。簡単な跳ね上げ窓だが開く範囲が小さく、少し遅い成長期が終わった実には出ることが出来ない。
「くそ………!」
他の窓も確認したが、全て同じ作りの物だったので出られない。
「こうなったら……!」
部屋にあった椅子を、外を覗いて安全そうだった窓に投げつけた。派手な音を立てて窓が割れると、実はすぐに外へ飛び出す。
「…………っ…人間……いっぱい…」
そこは2階にある部屋だったが、彼にとっては特に問題のある高さではない。地面に飛び降り、今度は色々な気配を辿って人の少ない方に進む。街にはたくさんの気配があり、全てから逃げるのはとても難しかった。
「…………うわっ!?」
雑多な気配を読みながら走っていると、上から何かが降ってきて身体に絡まった。頑丈そうな深紫色の網で、実の作ったナイフでは切れそうにない。
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