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肝試しの次の日、彼の身体には異変が起こっていた。身体が重く、動くのが億劫になるのだ。
「うー………昨日の夜は、ちゃんと塩を身体にかけて、しっかり靴とかも清めたのに…十字架のネックレスとかも久しぶりに引っ張り出して首にかけて寝たし…」
次々と、霊に効きそうな事を上げていた彼だが、その途中でハッと気付く。
「これ、もしかしなくてもタダの風邪か!?」
少々抜けているようだ。慌てて体温計を持ち出して体温を測ると、38度3分……確かに熱がある。
「道理でぞわぞわするし、身体も重い訳だ……母さん、風邪引いたー。」
熱があるとなれば、やることはひとつ。寝る。彼は、そのために動き出した。
「え?…顔赤いわね。熱は測った?」
「測った。ちょっと高かったから、おでこに貼るやつ持ってく。」
「8度3分!?ちょっと、病院行きなさいよ!」
彼は、冷感ゲルのシートを持ってリビングを出て行こうとしていた所を止められる。体温計の電源を切ったはずだったが、測った履歴を見られてしまったらしい。首根っこをむんずと捕まれ、あれよあれよと言う間にジャージへ着替えさせられて病院にいた。
「大袈裟だって……寝てれば治るし。」
「薬飲んだほうが早く治るでしょ。大人しく病人してなさい。」
「う……」
頭を小突かれ、力が出ない身体がフラついた。慌てて母親に助けられる。
「そんなにひどいの!?なんで早く言わないのよ。」
「朝起きたらこんなんだったんだよ。なんとなくぼーっとするだけだから、そんなに心配ないって。」
医師に名前を呼ばれて診察を受け、抗生物質などを処方された。夏風邪らしい。
「ほら、家帰ったらお粥作ってあげるわ。何味がいいの?」
「えー?なんでも良いよ……あ、今日の晩飯、俺の当番だ。」
「風邪引きに作らせるわけ無いでしょ。寝てなさい。」
家に帰ると、すぐさまパジャマに着替えさせられて、ベッドに押し込まれた。しばらくすると、小さめの片手鍋と茶碗を持った母親がやって来る。
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