はじまり

6/12
前へ
/62ページ
次へ
「実ー、めっちゃ熱出たんだって?大丈夫だったか?」 少し遅れて学校に登校すると、教室で同級生が声をかけてきた。先日、一緒に肝試しをした1人だ。 「おー、危うく入院させられそうだった。まさか、9度台が3日続くと思ってなかったから。」 夏休み終わりに席替えをした席に案内されながら話をする。 「お前、よく生きてたな。体温があんまり高い状態が続くと、人って本気でやばいらしいぜ?」 「そうなの?なんか、熱のせいでめっちゃ悪夢見た記憶しかないんだけど。」 彼が窓際の席に着くと、友達は机の隣に立ってポケットを漁る。 「へー。ま、治って良かったな。これ、俺らから。」 彼から渡されたのは小さなお守り。厄除けの刺繍がされている。 「ありがと。」 「お前、この前色々やばそうだったから本当に心配したわ。祟りとかだったら、こっちが申し訳ないし。」 「ははっ!風邪の前兆だっただけだよ。なぁ、今日までの授業のノート見せて。」 「おー、分かった。待ってて。」 席から離れていく友達からふと窓の方に目を向けると、何かが飛んできた。 「え?」 ガシャーン! 窓ガラスを割って、何かが頭に当たる。意外と硬かった様で、ゴッ…と鈍い音がして目の前が暗くなった。 「実!?」 「高瀬!大丈夫か!?」 友達と、担任の先生の声が同時に発せられたが、彼には聞こえていなかった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加