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次の日からも、彼の不運は止まらなかった。上から物が落ちてくるのは日常茶飯事だ。他にも、車が横を走ると水たまりの水をかけられたり、持ってきている物が無くなっていたり…とにかく不運なのだ。それに加え、夜は毎日悪夢を見るため、目に見えてげっそりとしている。
「おい、実!お前、今度の休みにお祓い行くぞ!見てるこっちが怖いわ!」
と、友達にこの前の教会に連れてこられたのは、熱を出してから3週間後。
「では、はじめます。」
神父がお祓いを始めると、彼はガタガタと震え始めた。
「実?大丈夫か?」
「う………うぁぁ……!」
頭を抱えて苦しんでいる。その場にいる友人全員が、慌てて駆け寄った。立てなくなるほどの苦しみらしく、その場に倒れこみ、もがいている。
『ふふ……そこの神父の力では、祓えないぞ?』
どこからか声が聞こえ、教会のステンドグラスが割れる。一瞬で、教会内はパニックに陥った。
『今、壮大な計画を実行中なんだ。邪魔はさせない。そこの少年は、我の物だ。諦めろ。』
くつくつという笑い声が少しずつ遠ざかると、後にはめちゃくちゃになった教会だけが残った。様々な色のガラスが、窓枠を残して全て砕けて地面に落ちている。
「「「………………。」」」
友人達は、自分達が囲んでいる彼を見た。真っ青な顔で気を失っており、未だに頭に手がある。頭が痛むのだろうか?
「申し訳ございません……私の力不足で……」
「………なんか、少しでもこういうのが減る方法とかないっすか?」
「最近、こいつ、本当にやばいんです。」
肝試しに連れて行った罪悪感からか、友人達は必死で彼を助けようとする。
「………聖水などもありますが…先ほどのレベルの憑き物ですと、正直効果があるか…」
しかし、返事は芳しくない。やはり、先ほどの声の持ち主は相当なものらしい。
「実……」
「俺たちのせいで……」
計画を立てた2人は真っ青な顔で彼を見ていたが、ついて行った1人は、小さく首を振った。
「あれは、断ることも出来たよ。ついて行った俺たちも悪いんだ。」
そう言って彼を背負った。運動部に所属しているらしく、自分より少し小さいだけの、意識が無い彼を軽々と運ぶ。
「行こう?実のお母さんに説明しないと。」
「あ、あぁ……そうだな。」
「高校入ってすぐにこんなになるなんて……やっぱり運がないけどね。」
3人はトボトボと彼の家へ歩いて行った。
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