その手を

3/22
3351人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
「ついてきて欲しい」 え……。 微笑んで彼が鞄から出して目の前に差し出したのは、ベージュ色したビロードの小箱。 中身が何かは、言われなくてもわかった。 受け取る手を伸ばす代わりに俯いてしまった私に、「理佐? 」 と驚きを隠し切れない先輩の声が降って来た。 「……まさか、嫌、なの? 」 そうじゃない。嫌じゃない。 先輩の隣にウェディングドレスで立つことを夢見なかったわけじゃない。 それにもう、付き合って7年目に入る私たち。 世間的に見れば潮時なのかもしれない。 だけど。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!