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「あの、」
勇気を振り絞って声をかけた。
「もし時間があるのなら、夕ご飯を今度こそおごらせて? 」
これは賭けだ。私のために、もう少しだけ時間を使ってくれるだろうか。
怜さんは列車を降りて以来初めて、私としっかりと視線を合わせて言った。
「これで君の想定してた旅は完了したんじゃないのか? 」
え?
想定してた旅?
何のことだろう。
ああ、もしかして。
「アンダルシアの旅のことですか? 」
「そうだよ」
そして予想外な質問が後に続いた。
「俺の役目も終わりだろ? 」
役目?
「役目って? 」
私の問いかけには答えずに、怜さんはまた目を伏せてしまった。
彼の次の言葉を待つが、聞こえてくるのはただ周りの喧騒ばかりだ。
二人の間に漂う沈黙に耐え切れずに、先に私が言葉を続ける。
「何のことかわからないけど、旅は家に着くまでが旅でしょう? 」
彼は小さくため息をつくと、「わかった。じゃ俺の知ってるところでいい? 」 と言ってまた出口に向かって歩き出した。
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