身代わり

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「どうした? 」 去っていくウェイターを目で追う私に怜さんが聞いてきた。 「えと、ドレッシングが、」 「ああ、これだよ」 そう言うと彼はテーブルの脇に並べてあった、背の高い二つの瓶を目の前に持ってきた。 へ? グリーンとアンバー色した、お洒落なガラス製の瓶だ。飾りかと思っていたのに。 「こっちがオリーブ油でこっちがビネガー。これを上からこうやって好きな量だけ降りいれて、」 言いながら二つの高いビンをひとつづつ手にして、まるでバトンでも扱うかのようにくぃっと両方ともさかさまにした。 そしてぴゅ、ぴゅ、と油とビネガーをグリーンの上に同時に振りかけると、スプーンとフォークで豪快に混ぜ合わせた。 「お好みで塩と胡椒もどうぞ」 えっ。 「自分でドレッシング、作るんですか? 」 それもサラダの上で即席に? 「ああ。それだと好きな量でそれぞれ入れられるだろ? 」 なるほど、究極のDIYサラダってことなのね。 「うわ、油っぽい。うわっ、塩ドバと出過ぎたー」 なかなか要領を得ない私に笑い出しながら、「やってやるよ」 と結局は怜さんにお世話になってしまった。
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