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「写真は続けるんだろう? 」
「ええ」
iPadにセーブした写真を見せた。
レティナディスプレイだと、南スペインの澄み渡る青い空や建物の朱色の屋根、白い壁を彩る花たちなどがとても鮮やかに映える。
「いいんじゃない? でも今は機材も編集ソフトも良くなっていて、誰でもそれなりの写真は撮れるようになってきてるからな」
「そうですね」
「だけど伝えるために何を撮るか、どう切り取るか、それは撮る人しだいだから」
「はい」
「がんばれよ」
「はい。あの、」
スケッチブックをしまい始めた彼がその手を止めた。
「ん? 」
「いつか怜さんにも感心してもらえるような写真、撮れるようにがんばりますから。だから、」
彼が私を凝視する。
「怜さんの絵も、いつか完成したものを見せてください」
彼はハッとしたような表情を見せると、俯いてしまった。
けれどすぐに顔をあげると、「ああ」 と言って立ち上がった。
「行こう。そろそろ駅に向かったほうがいい」
--------- ああ。
ついに来てしまった。
アンダルシアの旅を終える時が。
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