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それに、仮に既婚でなかったとしても、彼女がいるのならあのキスはなんなの。
違うよ、きっと違う。怜さんはひと時のアバンチュールを求めるようなタイプじゃない。
でもじゃあ、どうして電話番号もメアドも教えてくれないの。
どうしてこれ限りみたいな言い方をするの。
でも、でも、カルロスさんは私を彼の恋人だと思ってた。
あの二人は仲良さそうだったし。
でもカルロスさんが全てを知っているとは限らない。住んでいる国ですら違うんだから。
怜さんはなんでもぺらぺらしゃべりそうな人ではないし……。
考えれば考えるほど、思考は堂々巡りをし、さらには悪いほうに流れていきそうだった。
ああっ。もう!
気がつくと座席から立ち上がっていた。
こんなことしない方がいいんじゃないのか心の隅では感じつつも、揺れる列車の中、彼が歩いて行った方向へ進み始めた。
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