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何を食べたいのか聞かれたので、タパスを出すバル(バー)に行きたいと言ったら 「そんな軽いものでいいの」 と聞かれた。
いいの。
あなたと最初に食べた場所がタパス・バーなんだから。
……覚えてる? グラナダのあの夜を。
でもバーでいいと思ったのは、あまり食欲がわかなかったせいもあった。
怜さんがタクシーの運転手に何かを告げて、私たちは大きな公園らしき場所の近くで降りて、小さなバーに入った。
他の客はみなスペイン語を話す、たぶん地元の人たちで、それも男性ばかりという少しごつい感じの場所だった。
入った時にバーテンダーから客の何人かにまで、じろりと見られたけど、すぐに 「Toma asiento, bonita!」 (座りなよカワイコちゃん) と笑顔で言われて、空いているスツール1つを指差された。
「俺は存在していないのか? 」 と嘆く怜さんには笑いそうになったけど。
でも知ってる場所だと言ってただけあって、すぐにバーテンダーと二言三言、何か言葉を交わしていた。
カウンターの向こうにいるその彼にニヤリと意味深な笑みを投げられたような気もしたんだけど、もしかしてまた怜さんの彼女かとか誤解されているんだろうか。
……ああ、本当にそうだったなら。
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