第2章

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これから観光するにしても、夜の一人歩きは気が進まない。 でもまだ夕方だし、ずっとホテルにいるのも何だかなあ。 そう考えながらもベッドに倒れ込んだ私の意識はだんだん遠のいていく。 考えたら、今日は観光もしてないし、電車に乗っただけの一日だった。 でも楽しかった。 かすむ視界にうつるのは、男の子にもらったナン。 うふふふ。 まるで酒に酔ったかのように、にやけが止まらない。 もくもくもく。。。 夢の中で、大きな私はナンの雲の上に乗っていた。 手にはナン。 もぐもぐもぐ。。。 おいしい! 味は一見ないようだけど、噛みしめるほどに滋味深い。 もくもくもく。。。 ナンの雲の上にアップデートされるツイート。 twitter 田中裕也(@so-nntule)  ;今日も朝食はナン(でっかいパン)とチャーイ(紅茶)!行ってきます! そうか、裕也が言っていたナンってこのことだったんだ! でも・・・ ナンおいしいけど、毎朝は飽きるかなあ・・・ そんなぬるい夢の中では、裕也に対する感情なんて何も湧かなかった。 後で考えると、今朝は裕也の日本帰国のツイートであんなに浮かない気分だったのに、 異国の世界で、ひとりで電車に乗り、少しだけだけど現地の人と交流をし、おなかいっぱいご飯を食べ、裕也のことなんて少しも気にならなかった。 というか、全く思考回路から消えていた。 大げさだけれど、人生って分からないものなんだ。 そうして、不思議なナンの夢は一晩中続いたのだった。
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