第1章

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あ!! 念のため言っておきますが。 ウズベキスタンに決めたのは裕也に会いたいからとか、会うためとかではありません! って私、誰に対して言い訳しているんだろ(笑) 真面目に分析すると、私が旅先をここに決めた理由はこう。 海外旅行はニューヨークに次いで今回が二度目。 もっと言えば一人旅は今回が初めて。 パリ・ロンドン・バンコク・ハワイ・・・一人旅の候補地は沢山あったけれど、いつも心の奥底をくすぐっていたのはウズベキスタン。 もちろん裕也のツイッターの影響だけど、 ウズベキスタンについては詳しく調べることはしなかった。 実際、裕也のツイッターには写真がアップされていなかったので、そこからその国の景色をうかがい知ることはできなかった。 だからこそ、どんな形をしているか調べてしまったパリのエッフェル塔よりも、どんな展示物が配されているか調べてしまったロンドンの大英博物館よりも興味が湧いた。 ウズベキスタンってどんなところだろう。 首都の名前すら知らない。 twitter 田中裕也(@so-nntule)  ;今日はタシケントに買い物です。市場でおばちゃんと交流。 タシケントって首都の名前だったんだね。 裕也が訪れたことのある都市というよりも、それが首都の地名だったのだということが自分の頭の中で繋がったことの嬉しさが大きくて、思わずもう一度過去の投稿を見返す。 そうして空港を歩いているうち、「YOKO UCHIDA, 陽子」と書かれた紙を持った男性が目に入った。 深夜の空港着、日本の旅行会社を通じて、空港からホテルまでの送迎を手配していたのだ。 「ズドラーストヴィーチェ、ヨウコ」 髭をたくわえた立派な体型のおじさんが挨拶してくれる。 紙に書かれた「陽子」という漢字が何か違うのもこれまたご愛嬌。 見慣れぬ漢字を一生懸命書いてくれたんだ。 そのままタクシーに乗り込む。 おじさんは英語が出来て、ウズベキスタンではロシア語とウズベク語が通じるけれど、自分は観光客にはロシア語で話すことが多いと説明してくれる。 訛りが少しあるけれど、聞き取りやすい英語。そのまま会話を交わす。 そうだ、私流暢ではないけれど旅行会話程度なら英語が出来るんだ。 「何で自分で頼まないの!?中3の英語だって頼めるよ、サラダプリーズって!」 あの時の裕也の言葉がふいにフラッシュバックする。
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