第1章

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そうだね、英語力うんぬんよりも完全に気持ちの問題だった。 裕也に頼ろうって他に選択肢がなかった。 これ以上考えると惨めな気持ちになりそうだったので、頭を無理矢理横にブンブン回し、考えるのをやめる。 せっかくの休暇。 旅行を楽しもう。 ホテルにチェックインするころにはもう真夜中だったが、スマホを取り出し日本で心配しているであろう母親に到着の報告のメールを送った。 そして、静かにツイッターのアプリをタップする。 この旅行で決めていたことがひとつある。 一人旅で自分が変わるとか大そうなことは考えてはいなかったけれど、小さなことでもいいから何かを変えたいと。 旅行中は裕也のツイッターは見ない。 まず、はたから見ると裕也を追いかけてウズベキスタンに来たとしか見えない私が、現地でも彼のツイートを見るなんて、裕也からしたらストーカーだという小さな世間体がある。 後は、彼がどこにいるのかがツイッターで分かれば会いに行きたいという衝動に駆られそうな自分が怖かった。 ただ、一番の理由はこう。 ウズベキスタンに来た動機を作ってくれたのは裕也のツイッターだけれど、ここウズベキスタンでは彼の力に頼らず、自分の力で、自分の意思で旅行したい。 そんなささやかな目標を達成するために、ツイートを見ないというささやかすぎる制約を課す。 小さなようで自分にとっては大きな決意。 そして、これが最後とゆっくり裕也のツイートにスクロール。 同じウズベキスタンの空の下にいる裕也、私に力をください。 そう思いながら目にした最後のツイートは; twitter 田中裕也(@so-nntule)7月2日  ;当初三カ月の予定でしたが、業務の都合で本日、日本へ帰国の途へつきます。ありがとうウズベキスタン。
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