第2章

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ピピピピピピピピピピピピ・・・・・ 朝7時。 目覚ましが鳴る。 起き上ったものの、まだ寝ぼけまなこ。ぼさぼさの髪で、気づく。 そう、ここは家じゃない。 ウズベキスタンの首都、タシケントのホテル。 昨日の夜、裕也のツイッターを見てからまたおかしくなってしまった。 日本へ帰ったと知り、愕然とする自分。 仮に彼がウズベキスタンにいたとしても、会えるはずない、会ってもらえるはずもないのに、会える可能性がゼロになった瞬間、奈落の底に突き落とされた。 なんて浅ましい自分。 期待していたんだ、どこかで。 こんなもんだから昨晩はまともに寝れるはずもなく、一睡もできなかったのかそれとも途中でウトウトしていていたのかも分からない位、ただ茫然と過ごした一夜だった。 睡眠不足特有の、ぼんやりした感じと胸やけを感じながら無理矢理の身支度。 8時にはガイドとロビーで待ち合わせだ。 ロビーにて、ガイドと合流。 ガイドというか、昨晩の空港送迎のドライバーのおじさんで、ガイド兼ドライバーといったところか。 「ズドラストヴィーチェ!ヨウコ!」 はじける笑顔。 それに対して私は微笑で会釈するのがいっぱいいっぱい。 「・・・グッドモーニング!ヨウコ!」 私のリアクションが悪いのはロシア語が通じないせいと思ったのか、英語での挨拶に切り替えるガイド。 「アワー カー イズ アウトサイド!」 ホテルを出る。 車に乗り込むまでの少しの瞬間、日本より少し涼しい空気を感じただけで、後はぼんやりと車窓を眺める。特に何も感じることはない。 車内でこれからの説明を受け、チケットを一枚受け取る。 どれくらい走っただろうか。 気がつけば車は止まっていて、外に出るように促される。 困ったことがあればいつでもと電話番号を渡され、ガイドはとびきりの笑顔で、 「グッドラック!エンジョイ ユア ジャーニー!」 と言って車に戻った。 ブォンというエンジン音が鳴ってから、車が去って小さくなり、しまいには視界から消えた後、ドンと誰かに後ろからぶつかられた瞬間、 何もはっきり見えなかったものが、はっきり聞こえなかったものが、何もにおわなかったものが、そして感じなかったものが、まるで四方八方から急に針が突き刺さったかのように飛び込んできた。
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