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そもそもの始まりが、素晴らしくダメだったのだ。
齢27にして上京し、就職して、まだ2年。
慣れない一人暮らしと慣れない土地。
表面上のトモダチを誘う気になれなくて、一人で飲む気楽さを覚えた。
基本は家か、知り合いがいるBARばかりで、一人で新規開拓する気力もなかったのに。
なぜかその日の私は違った。
引っ越してからずっと気にしてた、オシャレな木造の洋風の居酒屋。
広さはそこまでないから、きっと落ち着いて過ごせそうな気がする。
それでも、ふらりと立ち寄る気は湧かなくて。
今まで意識していなかったのに。
その日だけは私の体が吸い寄せられるように、帰り道の通り沿いにあるこのお店に足を向けた。
ギシギシと木の階段を上がって、入り口ドアノブに手をかけた。
チリンッと少し高い鈴の音が響いて、ゆっくり扉を手前に引く。
中からこちらを伺う様子が感じられた。
入り口からは柱に阻まれてカウンターの全体が見えない。
あちらもそうだろう。
一瞬入って大丈夫かと迷ったが、もう開けてしまった扉は閉じれない。
足を一歩踏み入れた時に、人が寄ってくる気配を感じた。
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