第3話 目覚めた衝動

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今日はL字カウンター内はリクさんが座ってる席と、私の奥側の席から一つ飛ばしで2人、男性と女性がいる。おそらく常連さんで、見知った中なのだろう。 2人は会話を弾ませていた。 なるほど、リクさんは今話し相手がいないんだな。と納得する。 「昨日、俺先に帰っちゃったんですけど何時まで飲んでたんですか?」 「えーと、何時だったかな。4時くらい?」 「へぇ、珍しい。倉さんがそんな時間まで開けてるなんて。」 そうなんだと呟きかけた瞬間。 「いや、昨日は滅多に無いイレギュラーな日だよ。ほんと。 アラタさんまで残ってたからね。」 リクさん用のコロナを置きながら、さらりと話す倉坂さん。 「そうなんすか、ほんと珍しい。」 「だろ。アラタさんは結構時間きっちり帰る人だから。」 「遥香ちゃんもラストまでですか?」 「そうそう。」 遥香ちゃんは昨日私の横にいた女の子。 サラサラの肩までの前下がりボブで笑顔がキュートな印象だった。 私の2個下、25歳。 アラタさんは遥香ちゃん越しにお話ししていて、若干距離があった為、よく見れていないけど、スマートな大人の男性という印象だ。 倉坂さんがカウンター越しに、リクさんと私の会話に入って誰がどういう感じの人だと説明交じりに話してくれる。 隙の無い気づかいにまたも感心してしまった。 「それにしても、真実ちゃんのコミュニケーション能力には驚いたよ。あっという間に皆と打ち解けて盛り上がるから。」 「いえいえ、なんか改めてお酒の力ってすごいなって感じました。」 「またまたご謙遜を。」 にこやかに会話しながらも、時折目線が鋭く艶やかに感じるのは何故だろう。 その度に体に電気みたいな軽いしびれが走る。 お酒を取り込んだ為か、体温が上がったり下がったり忙しない。 どうしよう、こんな感覚、初めてのような、懐かしいような不思議な気分。
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