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放課後になり、クラスのみんながどんどん帰って行く。
今日は暑くて疲れたから、帰りにどこかで涼んで行こうって、ワイワイ騒ぎながら。
そんな中で俺は一人、その会話には参加せずに、自分の席に着いたまま窓の外を見つめた。
カバンの中に教材を詰めることもなく、ぼんやりと外を見ながら、あの可愛い足音がするのを待つ。
最近じゃ、これが日課になっている。
靴箱が込むからそれがめんどくさいだとか、もう少し暗くなってからじゃなきゃ帰り道に暑さにやられてしまうとか、そんな理由もこの居残りには多少は含まれているけれど。
それでもやっぱり。
パタパタと、走ってくる足音がする。
大きなスリッパのせいで、その走り方はぎこちない。
あぁもうすぐだ。
もうすぐ俊太がここに来る。
「達久くん…っ」
ほうら、また来た。
その声に緩む口元を必死に隠しながら振り返れば、廊下側の窓からひょっこり顔を出して俊太が俺を見ている。
それからにこにこ笑って、そのまま俺の所に走って来た。
「今日はすっげぇ暑いから、俺はもう少ししてから帰っけど、」
「うん、僕ももう少ししてから帰る…!」
俊太と一緒に時間を過ごす口実を作る。
俺がすぐに帰らないと言えば、こいつも一緒に残るんだ。
「じゃあ図書室に行って、しばらく涼む?」
「涼む!」
“ちょっと待ってろ”
ぽんぽんと頭を触り、俺は机に出しっぱなしにしてる教材やら何やらをやっとカバンに詰めた。
片づけて待っているのは何だか少し恥ずかしいから。
別にお前を待ってたわけじゃないし、一緒にいるつもりは今まで無かったんだと、ちょっとしたアピールのつもり。
まぁどうせ、俊太はそんなこと分からないんだろうけど。
ちらり、と視線を動かして俊太を見れば、そんな俺をきらきらした目で見つめ返す。
…思えば
確かあの日もこんな目をしてたな。
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