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「誰もいねーな」
しんとした図書館に、俺の声が響く。
学校の近くに大きな図書館があるし、調べ物したりするような奴らは、わざわざ学校の小さな図書室は利用しない。
だからうちの学校は放課後の利用者はいないし、仕事のない図書委員さんもサボりがちだ。
今日も、図書室に俊太と二人きり。
俺は、勝手にエアコンをつけると、日の当たらない席に座った。
それを待っていたかのように、すぐに俊太が俺の膝に乗る。
「俊太、暑いから」
「エアコンつけたじゃん」
席はいくらでも空いてるんだし、わざわざ俺に跨がらなくてもいいだろ。
「今つけたばっかだろ?もう少し涼しくなってからにしろよ」
「やだ、ぎゅうしたいもん」
「はぁー…」
何なんだこの可愛い生き物は。
甘えてくるのは、すごく可愛い。
だけどな、こんな暑い部屋でお前と密着したら、俺の息子が起きちゃうから。
せめて、部屋が冷えるまででいいから待ってくれよ。
涼しくなったらいくらでもぎゅうしてやるからと、何とか引き離そうとするも、俊太はシャツを破れそうなくらい強く握って離さない。
「ああーもう!」
だからそれは反則。可愛すぎるって。
中指を軽く立ててグーの形に拳を握り、俊太のこめかみの上をぐりぐりしてみる。
それでも俊太は俺から離れようとはせずに、腕を回し抱きついてくる。
「(頼むから起きるな俺の息子!)」
心の中でそう必死に叫び、俺は仕方なく俊太の背中に手を回した。
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