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「もう一年か……」
「……そうね。明日。この子の予定日でもあるわよ」
朝、カレンダーを見ながらぼそっと呟いたのは夫の山城 俊哉。愛しそうな表情で大きなお腹をさすりながら妻の千春はそう答えた。
「そうだ、お義母さんは大丈夫かしら?」
「あぁ。今バタバタしてるけど、それよりこの子の誕生をまだかと首長くして待ってて、きっと俺たちより張り切ってるよ」
俊哉は千春のお腹を撫で、苦笑いを浮かべながら答えていた。
「それなら良いんだけど……」
「あんまり心配しなくて大丈夫だよ。千春は何も考えずに元気な子供を産むのが先。俺も母さんも楽しみにしてるんだから。
なんてったって我が家の希望だからね」
心配そうな声を出す千春に俊哉は力強い声で答えた。
「……そうね。ねぇ俊哉?私、この子は明日にちゃんと産まれる気がするの」
その声を聞いた千春はまたお腹を撫でて俊弥の顔を見ながら言うと
「奇遇だね。俺も同じ風に思ってた」
俊哉は目を丸くしながら驚いたような表情を見せた。
そんな時に下に住んでいる俊哉の母親、奈津子の声が響いてきた。
「__俊哉!ちょっと手伝ってくれない?」
2人は顔を見合せた後俊哉はため息をつきながら立ち上がり、
「な?落ち込んでるようには見えないだろ?」
それだけ千春に言い残して部屋を出て階段を降りて行った。
明日。それは俊弥の父親、
和弥の誕生日であるのと同時に
去年病に倒れて寝たきりになった日でもあった。
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