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始まりはまだまだ寒い、二ヶ月前のことだった。
『遥祈を高校に行かせてあげたい』
それは依月さんの以前からの強い願いだった。
そしてそれを願っていたのは、依月さんだけじゃない。
僕だって、那月さんだってそれを望んでいた。
ハルは何も言わないけど、横切る高校生の子達を見て複雑な表情をしていたことを、僕たちは知っていたから。
ハルは事件のトラウマで、長く僕たち以外の他人と関わることも、一人で外出することも出来ないでいた。
だけどハルは去年の冬、それを乗り越えた。
入院していた依月さんの為に家を飛び出し、コンプレックスだった白い髪を人目に晒し、怖がっていた人の目を潜り抜けてたった一人で病院へと向かってこれた。
今はずっと切れずにいて長かった髪をばっさり切り、一人で買い物にも行ける。
颯真くんの誘いもあって出掛けることも増え、色々なものを自分の目で見て、体験していった。
そこまで自力で回復したハルが、高校生活に興味を持っているのだ。
ハルはずっと一人で頑張ってきた。
僕たちと出逢う前から、ずっと。
そんなハルが、我儘だし迷惑になるからと閉じ込めている子供にとって当たり前の願いを、どうにか叶えてあげかった。
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