今そこにある危機

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 俺、思うんだけどさ、ああいうタイプの男には気をつけたほうがいいよ。腹の中では何考えてるかわかんないタイプだから。あ、学生時代の友人を悪く言うつもりはなかったんだ。気を悪くしたらごめん。でも、君のことが心配だからさ。ついね。  おっと、ようやく家が見えてきたね。でも、結局何もなかったなぁ。誰ともすれ違わなかったし。そうは言っても、もしかしたらヤバイ奴が物陰に隠れていて、獲物を物色していたかもしれないよ。俺がいたから大丈夫だったけど、君一人だったら襲われていたかも……って、冗談だよ冗談。別に怖がらせるつもりなんてないから。  はい、無事到着。なんかさ、取り越し苦労だったかな。でも、こんなのは全然苦労なんかじゃないよ。むしろ、楽しかったくらいだ。だって、家まで送ったことで、君といる時間が少しでも長くなったんだからね。俺はすごく幸せさ。  それじゃ、おやすみ。バイバイ」  電柱の陰で足を止め、笑顔で手を振って見せた。彼女はちらりとこちらを振り返りつつ、アパートの外階段を登って行く。その姿を見届けてから、俺は来た道を戻り始めた。 「お帰り」  唐突に玄関脇の暗闇からぬっと姿を表した坊主頭の男の姿に、彼女は体を硬直させた。  男の顔が外灯に照らされたことで、それが自分の彼氏であることに気づき、安堵のため息をつくものの、その顔色は悪かった。 「なんだマー君、来てたの?驚かさないでよ」  その必要以上の驚きっぷりに、男は彼女の顔を気遣うように見つめる。 「おい、どうした。何かあったのか?」  彼女は通りのほうを一瞥してから、 「駅からずっと、変な男がついてきたのよ。一人でぶつぶつ言ちゃって、気味が悪いったらありゃしない」
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