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「お前の記憶が無いなら、俺の身の上話でも聞かせてやろうかと思ってな。記憶が戻る切っ掛けになるかもしれない」
「弁当食っていい?」
「……」
ナイトが髪を掻き上げて自分の世界に酔ってる所悪いが、俺は腹が減ってるんだよ。
売店のビニール袋をガサガサさせながら買ってきた弁当と箸を取り出す。
足りないかも、と追加で買った惣菜パンと紙パックのジュースも。
「俺は幼い頃に親を亡くし……ドラゴンの王に拾われたんだ」
「ナイト、お前飯は?」
気を遣って尋ねてやったのに、ナイトは「聞けよ!」と声を荒らげた。
「ご飯は……今日は買ってない」
「家から弁当でも持って来てんの?」
「作ってもらった事なんて……無い」
そう言って眼帯で隠していない方の目を伏せたナイトは、いつもの作ったような表情じゃない、素で寂しそうな顔をしていて。
「じゃ、これやるよ」
ヤキソバメンチカツパンを放り投げると、驚きながらもナイトがしっかりとキャッチした。
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