視線の先

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気を取り直し、私が真っ先に向かったのは屋外にあるペンギンプールだ。 ここは屋根のないオープンな作りになっていて、ペンギンたちの姿がよく見える。 お気に入りのイワトビペンギンのファンキーかつ愛らしい姿に、私はしばし寒さを忘れた。 ついつい顔がほころんでしまう。 若干、変な人に見られやしないかという不安もないではないが、見れば、少し離れた所にも、私と同じようにじっと熱心にペンギンを見つめている中学生くらいの少女が居るではないか。 ――うんうん。その気持ちわかるわかる。 同志の存在に心の中で何度もうなずく。 と、不意に冷たい海風が足元を吹き抜けた。 「寒っ!」 思わず小さな悲鳴を上げる。 なんだか急にテンションが下がってしまい、私は一旦、この場から離れる事にしたのだった。
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