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____月が見える。
緑いっぱいの道を、ずっと、歩いている。
それだけなのに、私の心はとても満ちていた。
鎖に繋がれていない、私。
外にいる、私。
このまま歩いていれば、いずれは世界の果てまで行けるのだろうか。
私以外の誰かに逢えるのだろうか。
私の世界は、広がるのだろうか。
『っ…!』
………だが突然、頭に強い痛みが走った。
私は頭をおさえ、うずくまって下を向く。
すると、伸びきった長い髪が視界に入る。
その髪は、そこらじゅうにある色と同じ、【緑】に染まっていた。
ああ、そうだ。
私は、【緑】を選んだ。
理解をすると頭の痛みは退いていく。私は顔をあげ、空を見上げた。
暗い。でも、明るい。
無数にちりばめられた星の一つ一つが輝いていて、オーロラが揺れている。
中でも一際輝き、私の目を惹くのは【月】だった。
そう。そう…………。
私は、【月】に魅入られた。
私はゆっくりと、月に向かって手を伸ばす。
すると私の中に、一つの衝動が沸き上がった。
_____求めても良いのだろうか。この衝動を。
とうの昔に諦め、忘れていたはずなのに。諦めていたはずなのに。手放したはずなのに。もう、どうでもいいのに。
体がふわふわする。
思考が鈍る。
理性が消え、本能だけが剥き出しになる感覚が襲いかかる。
その言葉を言っても、虚しいだけ。
それなのに、私は、
口を開き、音を、吐いた。
『…………………………たすけて。』
アナタハ、
____ナ、ヒト。
ふわ…………っ
そして次の瞬間。
伸ばした手が、掴まれた。
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