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目を開けると、私は黒い絨毯の上に横たわっていた。
「……。」
私は体を起こし、辺りを見渡す。
広い、部屋だった。
あと、白い。壁も。床も。
それなのに家具は1つも置かれてなくて、ただ黒い絨毯が敷かれてあるだけである。
離れたところに、扉があった。
私は立ち上がり、その扉に近付こうとする。
ガシャンッ
「ぅお…っと。」
だが、それは叶わなかった。
あと数歩というところで、私は何かに足を引っ張られてしまったのだ。
私は下を見る。すると私の足首には、冷たくて固い枷がしっかりと嵌められていた。
「……あぁ。」
私は思わず声を漏らす。
____そうだ。思い出した。
私は今、拘束されているんだった。
自身の置かれた状況を思い出すと、それがきっかけで、まるで霧が晴れていくかのように頭の中がクリアになっていった。
私は扉から離れ、かわりに反対側にある窓の外を見る。
明かりが射し込んでいる。しまった。まだ昼じゃないか。随分と早起きをしてしまった。
どうせ、ここからは出られない。一日中、何をするわけでもなくここに閉じ込められたままだ。それなら夢の中でまやかしに浸っていた方がどれだけ暇が潰せることか。
そうと分かれば、やること一つだ。私は黒い絨毯の上に戻り、再び横になった。………二度寝と言うやつである。
「はぁー……」
横になると、睡魔はすぐにやってきた。こんな状況でもすぐに眠たくなれるんだから、お気楽な性格だと思う。
まぁ、そんなことを言っても人は慣れてしまう生き物だ。それがどんな異常な生活であっても、やがてはそれが普通になる。
ああ、でも。
この生活が、異常だと感じていたのはいつの話だったっけ。
「………」
そうこうしているうちに、睡魔はいつの間にか私のそばまでやって来ていて。
私の意識を、簡単に、優しく、奪っていった。
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