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 シグマ・グラストの名を持つ少女の杖の先端が煌めき、束の間目を覆うほどの真っ白い光が辺りを包み込んだ。  ーー知らない、知らない、この先を。少女は少女の運命を知らない。罪深き者は外へ。しかしこれは元より持つ定め。少女の運命の歯車が動き出したというだけのこと。 ◆  んっ? とファイは首を傾げた。 「何だ?」  目を凝らす彼の視線の先には海の側の小さな森。今ファイとゼータのいる森よりもさらに小さいが、緑が豊かで一つの自然の空間を成している。そこから突如目映い光が発生したのだ。それは小さな森を覆い尽くし、やがて消えた。だが。 「んなっ!? お、おい、ゼータ。あそこ見て」 「何々?」  勢い良く肩を揺するファイを宥めながらゼータも彼の指差した方向に目を向ける。それからファイ同様驚愕のあまり目を丸くした。 「あ、あれ? あそこって小さな森があったはず・・・・・・だよね?」 「うん、。そのはずだったんだけど」  二人揃って言葉を失った。  それもそのはず。先程まであったはずの森が綺麗さっぱり消えてなくなっていたのだ。後に残ったのはただ、土だけ。他には何もない。 「どういうこと?」  ようやく口を開いたゼータも今度は開いた口が塞がらないといった感じだ。  しどろもどろファイが説明する。 「さっき急に超眩しい光が発生して、あの森がしばらく見えなくなって。光が止んだと思ったら、そしたら・・・・・・」 「ああなってたってわけだね」  うーん、とゼータが腕を組んで首を傾げる。元々眼鏡の効果もあって秀才に見えていたが、さらに外見の賢さが増した。ファイも腕を組んで空を仰いでみるが、中々さまにはならない。  踊り子達の音楽を耳に聴きながら思考を巡らせ、推理する。 「あそこって元々何があったっけ?」 「確か森で、その中央には小さな小屋があったはず」  ゼータの問い掛けに答えるファイ。ゼータはうんと頷く。 「そのはずだね。そして確か今その小屋は聖教会の謹慎部屋となっているはずだ」 「そうなのか」 「うん。そうシスターが口にしたのをたまたま耳にしたんだ」  ゼータは聖教会で働いていた。シスターや牧師の補佐役で、そこまで厳しい仕事ではない。知識さえあれば子供でも働くことが出来るのだ。そんな彼の言うことだ、間違いではないだろう。  ゼータは続ける。 「そして確か今、その部屋で謹慎を受けているシスターがいたはずだよ」
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