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第一章 目覚の時 「おおい、ゼータ、こっちこっち。こっからだとよく見えるよ」  見事な群青の髪を風に揺らしながら少年は右手を上げる。手にはめた半透明のリングが光を反射してきらりと光った。  潮の風に乗って軽快な音楽と人々の歓声が聞こえてくる。  呼ばれた少年、ゼータ・アガーテは左手を上げ了解のポーズを取る。 「待ってて。今登る」 「おう」  群青の髪の少年はにっと笑う。  彼がいるのは一本の大樹の幹の上。足をぶらつかせて座っている。ゼータも少年のように木を登ると、隣に並んで座った。うん、と両手を目一杯上げて伸びをする。それから潮の風を胸一杯に吸い込んだ。 「いやぁ、気持ちいいね、ここは。それにしてもファイ、よくここを見つけたね」  ゼータがくいっと黒縁眼鏡を持ち上げながら言うと、少年ーーファイ・メテオリートは誇らしげに胸を張った。 「まーな。俺はゼータがいない時もいつも一人で散策してるから。この場所は一昨日見つけた」  指を立てて説明する彼にゼータが笑う。 「あは、孤独の冒険って楽しい?」 「ば、馬鹿にするなよ。俺は、お前がいないから一人で散策して、こうやっていい場所見つけてんだ。俺だって好きで一人なわけじゃ・・・・・・」  からかうゼータに必死に反論するファイ。さらにゼータは声を上げて笑う。 「あはははは、冗談だよ、ファイ~。必死だなぁ」  するとファイが頬を赤らめた。 「悪かったな、必死で」  腕を組んでそっぽを向く。  二人の刹那の静寂の中に音楽と歓声が流れる。 「はいはい、悪かったって。でも僕君の一人散策はすごいと思ってるから」  次の瞬間ファイが勢いよくゼータの方を振り向いて、輝かせた透き通るような群青の瞳を向けた。 「へへ、すごいだろ。俺ってやっぱすごいんだよ。こんな場所だって見つけられるしさ」  得意満面で話すファイ。彼は自信家だ。そして感情が素直に表に出る。嫌なときは嫌と言い、嬉しいときは得意の満面の笑みで振る舞う。褒められて伸びるタイプだ。 「そうだね」  そんな彼には慣れっこのゼータが苦笑する。  場の空気が温かくなった。  音楽と歓声も一段と大きくなって、音を響かせている。  
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