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「まあな。だってゼータがそんなんじゃ親友の俺が困るもん。お前のためでもあるし、俺のためでもある」  親友、という言葉にゼータの心が熱くなった。形容しがたい喜びが込み上げてきたと言えば正しいのか。 「ありがとう」  とゼータは少し顔を赤くしながら礼を言った。  二人の間を抜ける一陣の風が二人の髪を、森全体を揺らし、蒼穹の彼方へ駆けていった。たなびいた真紅のマフラーはファイが首に巻いたもの。ふわりと浮いた服の裾はゼータの羽織ったもの。まるで今にも旅を始めるような、いかにも異国風の衣装はこの街には似合わない。それでも彼らは好んで異国風の服を纏う。旅に対する願望が大きく表れているのだ。  大通りを歩く集団が次々と通過してゆく。楽器を抱えた集団の次は小さな踊り子達だった。ちょうど二人と同じくらいの年の少女達が軽快で華やかな音楽に合わせて踊っている。その姿は躍動感に溢れ、きらきらと輝いて見えた。 「あの子達にもきっと踊り子になりたいっていう夢があったんだろうな」  ふと口にしたゼータにファイも肯定する。 「ああ、きっとな。そして夢を叶えた」  幼いながらも少女達の踊りは颯爽と優雅さの混じった美しいものだった。 「僕達にも出来るね。夢を叶えること。きっと」 「絶対、な」  そうして二人で顔を見合わせると笑った。まるで呼応するように森も優しく揺れた。  二人で見る街の景色は活気溢れて輝いていた。  ーー知らない、知らない。彼らは知らない。刹那に起こる出来事を。表れる夢の一歩を。それは望まなかった形で。次の瞬間には起こるでしょう。    ◆  いつまでこんなことをしていれば良いのだと少女は思った。口から吐いて出るのは愚痴と嫌気の数々。 「神に背いたから謹慎!? 三日間も!? 信じられない! わたしだってお祭り見たいのに!」  美しい顔に憎悪を露わにしながら放たれる言葉は誰にも届かない。それを良いことに少女は怒りの塊を吐き出す。 「しかも大人しく聖書と聖魔術の勉強をしていなさいですって!? 言っとくけどね、わたしは強いの、よっ!!」  手にした杖を横に凪払うと小さな刃が幾つも出現し、勢いよく四方に飛んでいった。   パリーンと破砕音が小さな木造の小屋に響いた。
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