夏の華

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  「──美園……」 「……克……行さん…… あ、あっ」 激しい熱に穿たれ、 あたしはこれまでにないほど 貪欲に彼を求め、 応える。 恥ずかしいなんて思う 余裕はない。 失うかも知れない恐怖を 思い出せば、 彼の想いを見失う方が ずっと怖かった。 そんなあたしを 愛おしんでくれるように、 織部先生も前とは違って、 夢中になってくれているように 思えた。 その仕種のひとつひとつが あまりに切実で、 まるで彼に 縋られているような 気持ちにさえなる。 自分より一回り近くも年上の この人が、 あたしを求めて、 縋りついて来る。 会いたくないだなんて、 顔も見たくないだなんて── 嘘つきで優しいあなたが、 腹が立つほど愛おしい。 .
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