夏の華

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  「……つゆき、さん…… 克行さん……」 苦しげな呼吸の中、 水の底から手を差し延べるように、 織部先生の背に腕を回した。 「ねえ……あの日言ったこと、 嘘でしょ? ──あたしのこと…… 好きでしょ?」 織部先生は それには答えなかった。 ただ一瞬、 とてもいたたまれない目をして、 確かな指先があたしの身体を また滑っていった。 何度繰り返したのか、 その中で織部先生は たった一度、 あたしの耳元で呟いてくれた。 “……愛してるよ”って。 .
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