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優しい風が僕の頬を撫でました。
もう、五月になるんだね。
何も変わらないまま僕らは大人になった。
がらくたばかり集めてたあの頃のほうが輝いていた。
そんな気がしないかい?
全てを捨てることは簡単だった。
大事な君に
メールで簡素で無機質に
さよなら、を告げるだけでよかったんだから。
泣きながら詰め寄って
壊れながら狂っていく君。
触れたかった。
けれど、触れられず。
触れることを拒んだのは僕なのに。
人間は理由をつけて、行動する生きものと
誰かが言ってた。
それから、数ヶ月。
今日。
懺悔を綴る、徒然と。
水面に掻き消された真実。
あぁ、なんと、美しく残酷か。
人の絶望は他人から見れば滑稽。
なりふり構わず絶望の音色を奏でるのだから。
その音はどんなメロディよりも外れていた。
だからこそ、笑いを誘う。
チューブだらけの僕を見て君は顔を蒼くして。
メイクが台無しになるのも構わずに。
静かに静かに泣きました。
その涙は僕のために流した?
そしたら、いらないよ。
君を捨てたのは僕なんだからさ。
ほら、もう泣かないで
陳腐な美談になりそうで。
Final!
誰かが叫んだから。
僕はうっすらと笑ったんだ。
だから、最期に君と目が合った瞬間に。
死にゆく僕から贈った最後の鎮魂歌。
〝あ・い・し・て・る〟
未練がましい僕からの。
執拗なくらいの鎮魂歌。
君に届けば。
喜劇になるから。
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