自立とは乖離のことである

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  しかたないので 放してやると、 蛍太が俺に見せていた ふざけた態度は 何だったんだ、 ってくらい あっという間に 莉々を追いかけていった。 蛍太が落としていった タオルを拾うと、 志緒が俺のそばに来て くすくすと笑い出す。 「……。何だ」 「いや、拓海さんが 他人のそういうことに 口を出すなんて。 びっくりしちゃった」 「自分の 城ん中のことくらい、 自分で管理できなくてどうする」 「素直じゃないなぁ」 言いながら志緒は パーテーションの裏で 背伸びをし、 こっそり俺に キスをしてくる。 小さく流れるラジオの音が あるからなのか、 大胆にも ちゅっと音を立てて。 「拓海さんが 本当はみんなに優しいの、 知ってる。 昔から」 「おだてても何も出ねえぞ」 「何か欲しいわけじゃないもの」 可愛いことを言う 志緒の瞳の奥は、 俺の心は自分のものだ、 という自信に満ちていた。 .
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