自立とは乖離のことである

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  言うと志緒は もう一度ボトルを見、 なにか納得した顔で フロアを出ていった。 聡い女だ。 喉の渇きは志緒に 癒してもらうとして、 人が話しかけて こなくなったので 暇になった。 そう思った瞬間、 知らない街で 迷子になった ガキのような気分になる。 別に女がいなきゃ なにもできない 情けない野郎の つもりはなかった。 志緒がいなくても 俺は10年の間それなりに こなしてきたのだ。 もし再会していなければ、 それなりの 今になっていたはずで。 ただ志緒は、 俺の 精神安定剤だと思う。 それは物心ついた頃からだ。 彼女がいれば、 意味なく 湧き上がり続ける 苛立ちが驚くほど すっきりと治まる。 浮かぶのは 俺らしくもない、 ポップで可愛らしい 旋律ばかり。 .
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