自立とは乖離のことである

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  ──そんなもん 売り物になるか! 自分の中で 抗いがたい 苛立ちがあふれ、 ビクリと 全身が震える。 はずみで そばにあった パイプ椅子に 靴の先が当たり、 ガシャンと響いた音で 近くにいたスタッフが 飛び上がった。 「悪い。当たった」 「あ、いえ…… 大丈夫、ですか」 俺が椅子を 蹴り上げたわけではないと 知るや、 スタッフは ほっとして笑い、 自分の仕事に 戻っていった。 その背を見ながら、 一瞬ではあるが 間違いなく 俺への恐怖を 顔に張り付けた 表情を思い返す。 痛みとも 息苦しさともつかない、 どうにも 看過できなさそうな 疼きがしくり、 と胸を刺した。 自分の言動が 普通の人間には 威圧感を与えてしまうことは わかっているが、 少なくとも 暴力的ではないはずだ。 .
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