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ああいう視線は
10代の頃から
慣れっこだったはずなのに。
なんで今頃、
思春期のガキみたいに
しくしく胸の疼きに
耐えなきゃならねえんだ。
「拓海さん、ただいま」
語尾にハートマークでも
つけてるのかと思うほど
甘ったるいささやきで、
志緒は背後から声をかけてきた。
「……おかえり」
言うが早いか、
志緒はペットボトルを
俺の手に握らせる。
俺がしっかり
受け取ったのを見てから
手を放すあたり、
丁寧に生きている
女だな、と思う。
渡された定番の
スポーツドリンクは、
水分吸収率抜群で
食品添加物がほとんど
入っていないものだった。
蓋を開けこくり……と
飲みながら、
水分が即座に
体に染み渡っていく
感覚を味わう。
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