自立とは乖離のことである

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  一口目はうまく感じた ドリンクは、 二口目には しょっぱくて甘くなった。 ペットボトルに 蓋をしながら、 栄養失調には程遠い 自分の体のことを思う。 ……俺の、 最近のこの体は 志緒が作ったものだ。 志緒に腹減りや 喉の渇きを心配され、 疲れたら抱いて抱かれて 癒されて。 彼女と 再会していなければ、 こんな落ち着いた自分に 出会うことは なかったのかも知れない。 知らなければ、 いつ折れるとも わからない心と体で それなりに 生きていたはずだと、 確信も持てるのに。 背後に立つ志緒の手を 後ろ手で探り当て、 自分の頬に触れさせた。 「拓海さん? どうしたの。疲れた?」 「いや……お前の手、 ひんやりして気持ちいい」 .
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