自立とは乖離のことである

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「たまには、 おうちに顔を出してあげて」 おずおずと、 いつもよりも 控えめな志緒の声が 飛んできた。 季節は蝉がじゃんじゃか やかましい夏の頃。 どうも化粧品の CMの曲を 引き受けることに なりそうだという 仕事の話を、 なぜか俺の部屋で 聞かされたあとの ことだった。 「……? なんのことだ」 一瞬、 なにを言われているのか わからなかった。 化粧品のCMは、 どうも紫の花を 女にたとえて演出されると 今聞いたばかりなので、 派手なアレンジの ミディアムバラードが いいだろう、と 色んな音を 思い浮かべていたところだ。 フローリングの継ぎ目を 意味もなく たどっていた視線を、 のろのろと持ち上げ 志緒に送った。 .
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