自立とは乖離のことである

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  「ペットボトル 握ってたから…… 暑いなら空調 いじってもらう? 拓海さん、 いつも体温高いから」 「そうじゃねえよ」 聡いくせに 妙なところで鈍いのは、 俺以外の 男経験がないからか。 手放せない。 ……手放せるわけがない。 この前、 楽屋で莉々に迫っていた 蛍太のことを 思い出した。 わかる。 惚れた女だ、 俺だって志緒を 抱かずにはいられない。 それしか方法のない 自分に嫌気すら 覚えるばかりだとしても、 彼女の中に混ざりたい、 溶けたい。 ……愛したい。 骨の髄どころか、 もっともっと深くて 細かい場所まで。 「志緒」 「うん?」 「お前、 俺がまた他の女と 寝たらどうする」 「“また”……?」 志緒の声に不審が混ざる。 .
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