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「おてて、にぎって」
「……」
子どもみたいな
ものの言いかたをする
志緒の声に、
こっちの胸が
キリリと痛くなった。
それこそ
ガキじゃあるまいし、
なにを確認したかった
わけじゃない。
俺はこの女に
必要とされているのかが、
知りたかった。
──俺が志緒のことを
必要でたまらないからだ。
もし俺が威圧的で
暴力的なだけの
男だとしたら──
そんな疑いに
足を取られそうになるだなんて、
らしくもない。
志緒の手を
やわらかく握りながら
自覚した瞬間、
母さんの
不安そうな顔が
思い出された。
母さんは、
誰にこうして手を
握って欲しかったのだろう。
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