自立とは乖離のことである

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  彼女はペットボトルを 持ったまま、 俺の前で立ち尽くしている。 その表情に 敏腕OLの影はなく、 いつもの “俺の志緒”だった。 「決まってるでしょ。 おうちって言ったら、 あなたの実家」 「なんで俺が」 「なんでって。 あなたのその質問に なんで、って言いたい。 あたしは」 真面目に 話しているのはわかるが、 仕事の話を プライベートに 持ち込んできたのは 志緒のほうだ。 俺の脳内に 仕事モードが 滲み出してしまうことくらい、 わかるだろう。 ただでさえ、 志緒を見ていると 浮かれたメロディが 体のどこかしらから 流れ出すというのに。 俺にしか 聴こえないものでは あるが。 志緒は音もなく 俺の前に座った。 .
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